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ブラックニッカ日々 2016-9-3

遅く起きて、図書館に返さなきゃいけない本や最近買った本を読む

小山田浩子「工場」は、広大な敷地を持ち、その敷地の中に住宅も飲食店もホームセンターとか美容院とか何もかもあるような工場の中の話を、それぞれ全然違う仕事をしていて立場も異なる人の視点がどんどん切り替わっていくような形式で書いている「工場」っていう小説を含む三篇が入った小説。何を作ってるのか分からないでかい工場っていうとそれだけでカフカっぽいが、確かにカフカっぽくもあるけどもっと全然俗っぽい。ある登場人物は勤務時間中ずっとシュレッダーをかけ続ける作業を担当してたり、工場の緑化を進めるために敷地のコケを研究する役を任される人がいたり、とにかく「なんのための仕事なのか」ということをみんな分からず、とりあえずやっているという。出てくる人が結構紋切り型な感じがして、設定のために作られた人格みたいな気がしてしまったけど、笑えるところもあるし、自分のお勤め経験とも響き合うというか、やっぱ、会社ってどこか俗なカフカっぽさがあるものだから、でかいビルで働いてた頃のことを思い出してうんざりし直したりして読んだ。

池内恵「イスラーム国の衝撃」は、イスラム国のことが全然わかってねえと思って読むことにした。とにかく中東の情勢が複雑すぎて地名も何も頭に全然入ってこなくてぼーっとすることが多かったが、イスラム国が今後、国家に匹敵するような力を持って戦争に打って出るようなことは起こりえないだろうけど、どれだけそれをせん滅しようと攻撃しても細かく分散して、また新たな集団が生まれるだけで、終わりがなさそうだってことはわかった。あと、イスラム国に共鳴して独自にジハードに参戦する「ローンウルフ型テロ」に関するくだりを読んでいくと、まさにそれはインターネットの素晴らしさ、例えばいつでもどこでも世界への窓が開かれていて一人ぼっちじゃなく、好きなことを誰でも自由に手軽に発信することができ、それを遠い国の誰かが評価してくれたりするし、自分も遠い国の誰かのメッセージを受け取って自分と同じことを考えてる人がいるんだなと思ってつながれたりするみたいな、「サウンドクラウドに曲上げたら海外の人からたくさんメッセージがついてそれをきっかけにどこかの国のレーベルからリリースすることになった」というようなこととまったく同じメリットをイスラム国も活用して影響力を世界に広めていて、なんとも皮肉すぎるというか、うむ……。

イスラム国に関する本、何冊か読んでもっとぼんやりでも概要を知りたい。

シカク出版「名作漫画誌 品格」は、シカクの巴さんが編集長になって創刊したインディペンデントマンガ誌で、自分は特に何も手伝っておらず、できたのをただ手に取って読んだだけなのだが、ちゃんと面白い雑誌になっていた。とにかくイシヤマアズサさんの「あなたのしらないわたしのこと」というマンガが素晴らしかった。団地暮らしの女の子のちょっとした日常の一コマという感じなのだが、「いってきます」と言ってドアを開けて外に出た時に、建物に切り取られた日差しがスッと通路に差し込んでいて「あっ」って声が出るシーンとか、イシヤマさんの作品は今のところ食べ物に関するものが多くて、描かれた食べ物がどれも異様なほどに美味しそうなのだが、食べ物に限らず、木漏れ日の動きとか、そよ風が吹いてくる感じだとか、そういうシズル感みたいなものにめちゃくちゃ敏感なんだと思う。あっと驚くストーリーみたいなのもたまに欲するときもあるけど、自分は、当たり前に存在する色々なものが改めてみると美しいみたいな感じに今とても興味がある。というかここ数年はずっとそればっかりだ。パリッコさんと「ビールの泡ってじっと見てたらすごくキレイじゃないですか!?」と驚き合って笑ったことが最近あった気がするのだが、そういうように、スピリチュアルでも、地球最高!みたいなものでも全然なく、ただ、雨の音でも定食屋から漏れてくる匂いでもなんでもいいけど、そういうものにグイグイ惹かれる。イシヤマさんのマンガはそれに溢れている。

「品格」は来年に2号が出るそうなのだが、作家陣がガラッと変わるのか、それとも今回の参加者がレギュラーメンバーのような形になるのか、とか、そこからして楽しみだ。

金子山「喰寝」は、この前のイベントで金子山さんにいただいた著作なのだが、548ページもある分厚い文庫サイズの写真集で、金子山さんが「今日」っていうタイトルでブログにアップし続けている都会の風景の3年半分から成っているものだという。道で抱き合ってる男女とか泥酔して寝てる人とか、東京が中心だと思われる町の中での色んな人のそのままの姿態がめくってもめくっても現れて、最初こそ「撮ってるのがバレて怒られたりしないのかな」とか邪推しながら見てるのだが、やっぱこのボリュームがすごくて、脳が洗われるというか、最後はもう人間のエネルギーしか感じなくなる。何日か前の金子山さんのブログを今見たらいつもの大阪の町もしっかり「喰寝」のテイストで写し取られていて不思議な感じがした。

北井一夫「流れ雲旅」は、この前タコシェに行ったら「著者サイン入り」だというのが並んでいて、いつか買いたいと思っていたので買うことにした。つげ義春と大崎紀夫と三人で東北の温泉を歩いた1970年頃のモノクロ写真で、つげ義春の紀行文の方の本にチラッと載っている写真は見ていたけどまとまったものは初めて見た。金子山さんの写真と違って、映っている人がみんなカメラを向いていて、撮られる緊張からキッとした顔をしていたり、案外リラックスした笑顔だったりするのだが、とにかくみんな顔と姿が良い。顔だけで100点のうちの80点ぐらい取ってくる感じ。なんの点だか分からないけど。当時の下北半島とか、交通的にも絶対に今とは比べものにならない距離感だろうし、その距離があったからそこにしかないものがそのままあったんだろうし、距離感も違い、それから50年近く経とうとしてる今とは何から何まで違うのかもしれないけど、パラパラみてると今すぐ東北に行きたくなる。つげ義春の顔もいいな。

顔の力、俺もつけていかないとな。

仕事したくないけどしないとやばいので少し進める。

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by chi-midoro | 2016-09-04 00:05 | 脱力
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