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ブラックニッカ日々 2016-12-9

昨夜はあのあと、自分に割り当てられた「ツーリスト」という等級の雑魚寝部屋に行ったら、自分の番号の寝床の横に男女が寝ていて、とてもその狭い隙間に入り込む気にはなれなかった。

見渡すと、真ん中辺に少しあいてるスペースがあり、そこに寝ることにしたが、一時間で目が覚めた。すごく乾燥しているのと、誰かのイビキと、なんか生臭い臭いとが気になって眠れそうになく、これならいっそのこと公共スペースで寝ようと思い、荷物持って部屋を出て、椅子やテーブルが置いてあるスペースに横になる。深夜なので誰もいない。

酒類の販売が終了しているのでカップ焼酎を大事に飲む。いつしか寝ていて、気づいたら昨日もこの場所で談笑していた韓国のおばさま方が朝おそらく4時前から談笑を再開しており、でも自分が寝ているので声を潜めて話しているようなので、申し訳なくなってデッキに出たりして過ごす。

お風呂が5時から開くので早々に入り、5:45からの朝バイキングを待つ。韓国のおばさま方がタフで、タッパーを持ってきていて、係りの人もそんなケースが前にもあったからか「NO!NO!」と言ってタッパーを速やかに預かっていた。バイキングにタッパー、その気持ちわかるがなかなかできない。

自分は浅ましいので満腹を超えた満腹状態まで食べてしまい、寝不足もあってへろへろ。しかももうそうこうしているうちに別府に着く。何も始まる前から疲れ果てていてこの先が思いやられた。とにかく横になりたい。

朝7時、港からバスで10分ほとで別府駅。別府駅からバスを乗り換え、行くとこないしなーと思って半ば惰性で「地獄めぐり」のある鉄輪(かんなわ)というバス停までいく。窓から「味のある看板(アジカン)」がたくさん見える。片っ端から撮りたい。ちなみにフェリーの料金に亀ノ井バスの一日乗車券もついているので乗り降りし放題だ。

「地獄めぐり」は、「血の池地獄」「かまど地獄」みたいに何々地獄というのがいくつもあり、全部周れる共通券が2000円である。それはなかなか出せない金額に思われ、鉄輪バス停から歩いてすぐの「海地獄」というのだけ400円払って見る。100度近い湯がブシュブシュ噴出し、硫酸鉄を含んでいるためにすごく青い。ハワイの海みたいな。なんだよこれ!すげーなおい!と思い、全地獄見たくなる。お土産ショップで、海地獄入浴剤みたいなの買う。

というかもうこの辺りは温泉が湧き放題で、町の至る所からもくもくと白煙が立ちのぼっている。天の恵みっていう感じ。「いでゆ坂」という通りを散策していたら、閉まっている店の前に「ご自由にお持ちください」と書いた箱があって覗いたら、なんとも可愛い小皿と、古いサントリーのビールジョッキなどがありもらっていくことにする。いきなりリュックの中にビールジョッキが。

またしばらく歩くと「すじ湯」という銭湯が現れた。建物の前にベンチがあり、そこにおじさんが座っていたのだが、「ここ入浴料100円」と声をかけてくれる。「えー安いですね」と言うと、「あっちなんかタダよ」と向こうを指さす。よし、ここもあっちも入ろうと決めた。「どこから来たの」
「大阪からです」
「大阪のどこ?」
「都島というところで」
「あらー中心だねー。私も高槻にいたことがある。若い頃」
「えーそうなんですか!フェリーに乗ってきたんです」
「そうか、温泉入ってまあゆっくり。ここは肩こりに効くから。すじ湯といえば有名でね。今なら貸切よ」
「貸切ですか!入ってきます」
と言って、100円を料金箱に入れて男湯へ入ると、靴を脱いで脱衣所があり、仕切りも何もなくそのまま湯船がある空間で、蛇口もなく、もちろんシャワーもなく、桶で体を流してから入る、というシステム。この空間にシステムという言葉ほど似合わないものはない。

お湯はそんなに熱くもなくちょうどよし。つかりながら窓から差し込む光をぼんやり眺める。小さな空間である。持ってきていたタオルで体を拭いてサッと出る。さっきのおじさんはもういなくて、おじさんが指さしていた方へ歩いていくと、「熱の湯温泉」という共同浴場があり、本当に無料と書いてある。さっきの「すじ湯」より大きな建物で、入ると、やはり脱衣所も浴場もワンセットにつながった空間で、老人たちが床に座り込んで体を洗っている。こっちは蛇口もあって、みんなシャンプーや石鹸を持ち込んで体を洗っている(さっきのすじ湯は、石鹸を使わないでと書いてあった、流せないから)。5人ぐらいいたかな。みんな佇まいが良い。

そして、やはりここも天井近い窓から日が差し、太陽が雲に隠れたようで、一瞬にしてうす暗くなり、また明るくなっていくその時間の流れがたまらなく沁みた。隣の女湯から「お父さーん」という声がして「あいよ」と坊主のおじさんが答えて、上がっていった。たまらん。

さらに歩いて、「地獄原温泉」(100円)、「谷の湯」(150円)に入る。どれもそれぞれ建物と浴槽に違いがあり、素晴らしい。浴場に入って先客がいたら挨拶するのが習わし。特に「谷の湯」は浴槽のかたわらに祠があり、彩色の少し剥げた不動明王像が立っている。もう、つげ義春の世界としか思えない。料金は、入口に立てかけられたパイプにお金を入れるとせんべいかクッキーかなんかの缶にチャリンと入る仕組み。

浴場の中には、会員限定のものもある。月いくらか払うといつでも入れるらしい。裏路地もすべて風情があり、煙がもうもうと立ち、大衆演劇をやるらしい「ヤング劇場」の建物があり、歩いているだけでざわざわ鳥肌が立つ町だ。温泉に入っていたらいつの間にかすっかり体力も回復した気がする。

バス停まで戻るとちょうど別府駅行きのバスが来たので飛び乗り、別府駅から歩いて今度は竹瓦温泉へ。ここは事前に調べていて、砂湯に入れるというので行くつもりであった。ヘルスやソープ、キャバレーなどがあるエリアにいきなり昔の学校みたいな建物が現れ、それが竹瓦温泉だ。「現在の建物は昭和13年(1938)に建設されたもの」と観光案内のサイトにあった。

入っていって、受付のおばあさんに「砂湯に入りたいんですが」と言うと、浴衣を渡してくれる。1030円也。ちなみに砂湯じゃない、普通のお風呂も別にあって、そっちは100円。

砂湯は、脱衣所で裸になって浴衣を着て、それで砂が敷き詰められた大部屋に入っていって、寝転んで係りの人に砂をかけてもらう。事前にお願いすると、写真も撮ってくれる。一眼レフのカメラを渡すと、「みなさん、ケータイの方が多いんですけど、わたしこういうカメラは全然わからなくてー」と50代と思しき女性が笑う。こっちはもう砂を全身に乗せられて身動き取れない状況なので、「その、銀のボタンを」「もう少しだけ長く押してもらって」と口で説明するしかない。面倒をかけてしまった。しかし後で見たらすごく良い写真を撮ってくださっていた。

砂はすごく重たくて(全身で50kgぐらい乗せるらしい)、係のおばさん二人の会話を聞くともなしに聞き(内容まではわからない)、高い天井からの光を眺め、じわじわと体が熱くなってくるのを感じながら、目をつぶって少しウトウトした。何か夢を見たと思う。15分ほどで終わりになって、浴衣を脱いで砂湯客専用のシャワーと湯船で砂を落とす。ちなみにその時は客は自分だけだった。

休憩所も広々していて最高だし、温泉の外のベンチも素晴らしい。しばらくそこに座って本を読む。なんで自分は今ここにいて、明日にはいないのか。変だ。

それにしてもまだ11時にもならない。行こうと思っている「湖月」という餃子屋さんは14時開店。とりあえず町を歩き回る。竹瓦温泉あたりでは客引きのおじさんが「6000円で遊べるよー」と言っていた。

アーケードの商店街を中心部から外側に向かって歩いていくと、途中で完全なシャッター街になる。建物も歪んだり崩れたりしていて、歩いているのは老人ばかり。そんな道を先に行ったところに「六盛」というラーメン屋があり、中をみるとかなり混んでいて、どうやら別府名物の冷麺の名店らしい。えーどうしよう、ここで食っちゃったら後で……とか悩んでいたら、後ろから人が来て「え?あなた入るの入らないの」みたいな風に思わせてしまったようなので、勢いで入る。

冷麺750円。美味い。とても。これは食べてよかった。
醤油味の中華そば、豚骨スープのラーメンもあり、そっちにも心惹かれた。

腹ごなしにまた駅まで歩き、駅からフェリー乗り場の方までダラダラ歩く。バスで10分ぐらいの距離だったので、それなりの時間がかかったのだが、天気も良いし、ダウン着てると汗ばむぐらいの温かさで快適。大きな書店があったので入ってみたが、期待していた地元本みたいなのは全然なくて、じゃらんみたいなガイド誌があるだけみたいだった。

乗ってきたフェリーは、一回乗ると「アップグレード券」というのをくれて、それを出すと、空きがあれば、大部屋から相部屋のベッドに等級を上げてもらえる。フェリー乗り場へ行ってその手続きをしてもらおうと思ったが、乗船間近にならないとできないらしい。

無駄足となり、また来た道を引き返す。途中、海も見る。

お土産屋をひやかしたり、色々して、ようやく15時近くなった。路地裏の「湖月」で餃子とビール。この餃子も本当に美味い。パリパリしてプリッとして、とか月並みにしか表現できないけど。途中、何人かテイクアウトしていくお客さんがいた。

で、その後は駅前市場を見て歩き、「別府タオル」というやたら懐かしい絵柄の入ったタオルを売る店でタオルを買ったりしつつ散策し続ける。「錦栄温泉」という銭湯が良い雰囲気だったので、今日の最後の湯にする。6湯目。ここも100円。受付のご主人「貴重品預かっておきましょうか。まあ誰も持っていかないけどね。カメラ預かっておきますよ。あらニコンじゃないの。良いカメラ」。

今日入った中では一番熱めのお湯。気持ち良い。少し歩き疲れていたのが回復した気分。

服着て受付でカメラを受け取ると「お湯、熱かったでしょ。この辺りで一番熱いのが好きなお客さんがちょうど来てるんだもん。あなたも間が悪いよーあはは」とご主人。

今日の最後の立ち寄りどころにしようと思っている「九丁目の八ちょう目」は17時開店で、まだ16時半。どうやって時間を潰そうかと思って店の前を通ると、のれんがかかっている。そろりそろりと入っていくともう入っていいとのこと。カウンターだけの店。おでんの大なべの前に座る。おでんのダシは継ぎ足し継ぎ足しで60年。

図書館に行った帰りだと言うお父さんと息子さんがおでんを少しだけつまんで帰っていく。47年通っているという大常連の方が焼酎お湯割りを2杯、かぼすを絞って飲んで買っていく。その常連さんは、さっき自分が入った「錦栄温泉」に行ってから来たらしく「熱かったろ」と言う。

気さくなご主人にお店の話を色々聞き、ここでこうしている時間がたまらなく愛しく思えてきた。しかし帰らなければならない。18時にはお店を出て、駅前まで戻り、バスを待ってフェリー乗り場に着いたのが18時40分頃。心配していた「アップグレード券」も無事使えて、晴れてベッド席。これで少しは寝れそうだ。

フェリーは19時35分発。金曜夜ということもあって行きとは大違いの混雑ぶり。若い人もいるし、団体客もいるようだ。バイキングはすでに満席とのアナウンス。テーブルや椅子のあるスペースも弁当広げて食べてる家族やグループで溢れかえり、みんなテンションが高くて大賑わいだ。自分はもう満腹で、今日はとにかく寝たいので、チューハイ買って少しだけ船内をうろつき、ベッドで本を読む。カーテン閉めれば完全に個室だし最高。これは雑魚寝部屋とは雲泥の違い。こんな混んでるのによく取れたなと思う。よかった。

フェリーの案内所前に似顔絵コーナーができていて、似顔絵描きの人が描いてくれる。たまに町で見るようなやつ。それが長蛇の列でギャラリーまでできている。描いてもらってる人の後ろに立って、「目元はうまい、でもそれ以外はあまり似てない」とか繰り返し言って「そんなこと言わないでくださいよぉ」と似顔絵師に苦笑いされている老人がいて、しかもどうも、描いてもらってる人とも全然関係ない、さすらいの老人みたいで、「はは面倒な老人」と思ってベッドのある部屋に戻ったら、自分の隣のベッドがその老人だったので笑った。「思ったよりぬくいな」「いやーぬくいな」とかめちゃくちゃひとり言をつぶやいていて、これは今日も眠れないかも!と思って不安になったが、すぐ静かになった。

22時就寝。トイレに一回起きて、あとはそのまま6時頃まで眠っていた。

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by chi-midoro | 2016-12-09 20:17 | 脱力
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