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ブラックニッカ日々 2016-12-10

フェリーが朝7時半ごろ大阪の南港につき、すぐに地下鉄に乗って帰る。
フェリーに乗っていた団体客はこのままバスでツアーに出かけるようだ。USJへ行くツアーバスもあるようだった。

こうして家に戻ってきてみると、時間の感覚が変になっている。
長い間のことだったような、一瞬だったような。
あと、船の揺れが身体からずっと消えなくてふらふらする。
それにしてもお金を使い過ぎた。

荷物を整理し、少し横になったりして昼はカップ麺で済ませる。
シャワーを浴びる時に、左手中指の傷をカバーしてたテープを剥がしたら一緒にかさぶたもとれて、
ようやくただの肌みたいなルックスになった。

巴さんから連絡あり、本当は明日、赤犬のカモさんと巴さんと自分とでラーメン屋台を出す予定だったのだが、
どうしても自分が参加できず、せめて巴さんの負担を減らすべく、
1kg分、麺の生地を作ることにする。
500gずつ、二回に分けて強力粉に塩とかんすいを混ぜ合わせて生地を作る。
17時半ごろ巴さんが家の近くまで自転車で来てくれて、生地を渡す。

ずっと前、こまんたれ部さんからおすすめしてもらった長嶋有「三の隣は五号室」を読み終えた。
フェリー旅に持って行っており、そこでだいぶ読めた。
アパートの五号室に住んだ歴代の住人達が入れ子状に登場しては、
例えばある住人とある住人は、この場所に食器棚を置いて、
この住人とこの住人は同じ部屋で同じようなことを思い、みたいな、
同じ部屋に住んでいても別々の時間を過ごし、お互いに一切知りもしない人たちが、
一つの建物の中でそうとはしらずに通い合うということを色々なやり方で書いている。
書き方がポップで、可愛らしい笑いが散りばめられていて、
保坂和志も「家の持つ記憶」みたいなことを書いていたけど、それよりもかなりキャッチ―であった。
この小説自体から離れて考えてみても、同じ空間にかつて住んでいた人というのは、
新築の住居でない限り絶対いるわけで、同じ天井を見つめて寝たりしたはずで、
考えだすととめどなく面白い。
そこから考えを伸ばしていけば、建物じゃなくても、「同じこの坂で」とか、
それこそ人間の誕生から今までの心の通いあいもあるに違いなく(ずっと昔から住みやすいとされてきた土地とか)、
それを本格的に考えていくと学問の領域につながっていくんだろう。

でもとにかくこの本を読むことで、今住んでいるこの部屋で、過去に誰かが、とかいつかまた誰かが同じ部屋に住むとして、みたいなことを今までより近しいものとして想像できる気がして楽しい気分だ。

ホームセンターについて書いた部分「たとえばペットを飼ったり、電動ドリルで壁に穴を開けて独自に棚をつったり、バーベキューグリルで肉を焼いたり、換気扇の汚れをピカピカにしてもいい。「よく」するための、あらゆる工具や素材が、整然と分けられ、巨大な空間に並べられているのをみると、なにもしないうちから全能感を抱く」が面白くて、確かに、全部あれ生活を良くしようとしてのものだよな。自分は全然ホームセンターに行く用がなくてそれは生活を良くしようとしてない、そういう思いが無いからかもしれない。

小説の中には、ある時に蛇口をひねる式の物からレバー式に変えた家族が出てきて、その後に住んだ人はそれを当たり前のように使ってたり、そういうことには興味がない住人ももちろんおり、住む人のそれぞれの生活を良くしたい思いのバリエーションも面白い。さっき書いたことと矛盾するけど、生活を良くするために必ずしもホームセンターが必要とは限らないか。

ずっと読んでいた「ストーナー」も読み終える。「三の隣は五号室」に比べたらド渋い小説だけど、しみじみよい。本当に最後までこれといったドラマは無くて、ストーナーを目の敵のようにしている教授がエネルギッシュに嫌がらせしてくるとか、あってもそれぐらいで、最後も死に向かって行くストーナーの様子が丁寧に書かれていて、ストーナーが死ぬところで終わる。その死に向かっていく描写がすごく良くて、全然嫌な気がしない。どんな動きも静止に向かって進んでいく、当然のこと。感覚が徐々にぼんやりして、人の声が聞こえなくなって、自分が今喋っているのか、考えているのか、今がいつなのかどうか分からなくなっても、その時やっと分かることもある、というように書かれている。分かることもあるというか、そうなってたどり着く心地よい境地もあるというか。

時間とともに去っていくもの、減退していくものが、この小説には諦めとともにじっくり書かれていて、心底沁みるのだった。

ストーナーの妻のイーディスが最初から最後まで、どこまでも通じ合えない相手として書かれていて、その違和感も生々しくて印象的だった。あとストーナーの人生の中に、第一次世界大戦、第二次世界大戦どちらも出てくるのだが、周りの血気さかんな、優秀な人たちが我先にと軍に志願していく風に書かれている。

明日図書館に返すけど、いくつになって読み返しても絶対面白い本だから買って置いておきたい。

ゲオにDVD返しにいくついでにまた借りてくる。
書かなきゃいけない、そんなに大変じゃないはずの文章が書けなくて酒ばかり飲んでしまう。

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by chi-midoro | 2016-12-11 00:00 | 脱力
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