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ブラックニッカ日々 2017-05-16

今日は朝から姫路で取材。
なので8時に家を出る。
大阪から三ノ宮とか明石とか飛び越えてずーっと行く。
思った以上に遠い。片道1600円ぐらい。
電車の中では「三田文学」の2017年冬季号、保坂和志が特集されたやつを読む。

山下澄人、磯崎憲一郎、佐々木敦、石川忠司とか、保坂和志まわりの人が文章を寄せたり対談したりしていて、濃い内容。

保坂和志が安藤礼二との対談で、人工知能の時代になったときに人間が最後にできるのは祈ることだと思う、と言っている。祈ることほど非効率的な、非合理なことは無いと。究極の無駄ということだろう。
効率的でないこと、合理的でないことをずっとやっているとそれが祈りに似てくるということもあるかもしれない。

あと、小島信夫が「私は長編は書くが、短編は書く」と書いていたという話。何度読んでも力が抜ける文章。「てにをは」とか接続詞の使い方さえわかれば、パズルのように文章を書き継いでいける気がするけど、そんなのもまあ、別に合ってなきゃダメなわけでもないし、そんなルールを無視する勢いこそ小説的だというような。

あと、岡英里奈という人が「コーリング」について書いている文章の中にこうあった。

・私とは何か。自己分析のようなことをしていると、この問いが狭苦しくてしょうがないが、私というのは十分大きくて広がりのあるものなのだから安心してよい。

この急に来る「安心してよい」が面白い。

俺の人生、全然特に面白いエピソードに溢れてもいないし、もし「情熱大陸」に取り上げられるとしたら、まったく盛り上がりのないものになるであろう。だけどもだけど、「情熱大陸」的な人生が良い、ということもまた全然そうとも限らないのだ。そういうことはいっつも忘れる。
ドラマチックなもの、声を出して笑えるようなもの、短くうまくまとまったものだとか、放っておくとそういうものにすぐ引き寄せられるけど、そういったことの価値は色々ある中のほんの一つなのだ。テレビばっかり見てるとそれを忘れてしまう。

情熱大陸的でないこと、すべらない話じゃないこと。それがどうしたというのか。安心してよい。

「三田文学」を読みながら、ふと車窓から外を見たら、田んぼのあぜ道をチャリに乗った爺さんが走っていて、俺がそれを「あ、じいさん」と思いながら見た。
そしたら爺さんがホントにチラッとだけど電車の方を見た。きっと「あ、電車」と思って見たんだろう。
ただそれだけ、一瞬の感慨。

帰りは絶対缶チューハイを買いながらこの電車に乗ろうと思ったが、結論から言うと帰りはベロベロになって乗って起きたら大阪だった。

それで、姫路に着いた。
ひとつめの取材先は姫路から山陽電車に乗り継いだ「手柄」という駅が最寄りだ。
2両編成の電車。全部で6人ぐらいの乗客。
早く酒が飲みたい。

カメラマンの尾上さんと合流し、取材はつつがなく終了。
その時点で10時半ぐらいで、そこから次の取材まで3時間空く。
とりあえずバスで姫路駅へ。
どうしたものかと思っていたが、「ガスト行きますか」と尾上さんが言うので姫路駅前のガストに入る。
次の取材は居酒屋での飲み食いなのであまりお腹に物を入れたくなくてドリンクバーを頼む。
すると、「ドリンクバーは何かセットにしたするとお安くなりますが」と店員さんが言ってくれて、
そうか、そうだよな、と思い、「日替わりスープにドリンクバーを付けてもいいですか?」と言う。
計算するとドリンクバー単品よりそうした方が合計50円ほど安くなる。

「スープにドリンクバー……ですね。…?かしこまりました」と首をかしげながら店員さんは去っていった。
しばらくして店員さんが戻ってきて「すみません。ドリンクバーはお料理かデザートとセットにしていただくということで、ただ、今回はOKが出ましたので、OKです」と言う。めちゃ恥ずかしかった。

スープとジュースを交互に飲みながら尾上さんと健康に関する話。
途中で二人とも疲れ、無言でスマホを見る。
姫路城に散歩に行ったりすればよかったと今になって思う。

ようやく13時を過ぎ、バスで車崎というバス停まで行く。
目の前の「かどや」という大衆食堂を取材させてもらう。

最高の外観、最高の店内。
お店の方も優しく、そして、好きにやってな、と放っておいてくれる感じだ。
撮影終了後は姫路おでんやおつまみをいただきつつお酒を飲む。
塩味の「中華そば」がめちゃくちゃうまい。あれはなんだったのか。
背筋がゾッとするほどうまかった。

尾上さんは夕方から甲子園に野球を見に行くので急いで帰り、ひとり残った。
お店に来ていた常連さんが「一杯ごちそうするからこっち来て一緒に飲もうや」と声をかけてくれたので、
席を移動して飲む。
建設現場で仕事をしている二人組で、仕事が終わって飲んでいたという。
10代の頃からこの食堂に通っていて、この店の中華そばが大好きなのだとか。
「俺ら弁当なんて持ってこうへん。こういう食堂きたら食べたいもんがなんでもあるからな。大衆食堂は職人のレストランみたいなもんや。昔はこういう食堂がいっぱいあったんやけど今は減ってもうた」
今も残る姫路や明石あたりの大衆食堂をいくつか教えてもらう。

「そうかぁ。兄ちゃん東京から大阪に来たんか。うちらも大阪行ったら、姫路のイントネーションやってよう言われた。言葉なんかなんも気にすることないで」

それから賭博で一発で300万失った話など聞き、しみじみ良い時間を味わって店を出た。
バスに乗り、姫路駅からまっすぐ帰宅。

一度寝てまた起きて今2時半。

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by chi-midoro | 2017-05-17 02:37 | 脱力
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