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ブラックニッカ日々 2017-11-13

朝、すっきり目覚める。

仕事先からメールが来ていて、
「人事異動で担当を外れることになり、後任が未定なので来月から原稿の発注がなくなります」とのこと。
それはそうなのだろうが、すでに来月に載せる約束だった原稿の取材が済んでいる。
それはどうなるのかと聞くと「上司と検討させていただきます」と。
しばらくして返事があり「掲載時期は未定だがなんとか掲載させていただきます」と言う。

そうかぁーこうやって突然仕事がなくなるんだよな、そうなるといきなり金が無くなるな…。
とぼーっとしているとしばらくしてまたメールが来て、
「やっぱり掲載の約束はできない」「これ以上のことは上司に聞いてください」とメールアドレスが貼られている。

それで改めてそっちへ問い合わせ、「時期はいつになるかわからないがそれは掲載するようにする」みたいなことに。
すごく大きな会社で、契約書うんぬんのやり取りも一番細かい。
だけど一番冷たくて、毎月書いていた原稿が「今月から半分になります」と当月に連絡が来るし、細かいところでも常に高圧的である。
それでさらにさらに一番原稿料が安い。

自分はそこで働いていた時期もあり、大きな組織に対する違和感や嫌悪感もそこですべて醸成していったものだったので、
心底合わないんだろうと思う。
本当に嫌いである。この仕事に関しては無くなって清々するような感じだ。

しかし、こんなように何社かからの仕事が止まればすぐにでも職を探さなければならないんだと思うと、
改めて不安な気持ちにもなる。

昼は母と生駒軒でタンメン。しかし仕事のことを考えてしまい集中できない。
はらはらした気持ちのまま部屋に戻り、夕方までとにかく少しずつ仕事を進める。

つけっぱなしのテレビから愛媛県松山市で車が市街地を暴走したニュースが流れてきた。
車はバンパーもぶっ壊れタイヤもパンクした状態で縦横無尽に走りまくり、
運転席では平然とした顔で運転し続けるメガネの男。たまにカメラに向かってなんかおどけたりする。
商店街もスレスレで走り抜ける。
真っ先に「ドラッグかな?」と思ったが、アルコールなども検出されず、
なんと!後部座席には母親が乗っていたという。
まったくどういうことなのか腑に落ちない。

座間の9人の遺体が出てきた事件もそうだが、
事件があった時、とにかく早く納得したい、
ああいう人で、ああだからこういう事件が起きたというストーリーを知って納得したいけど、
座間の事件も、この暴走もそういう安直な自分の理解したさを超えてわけがわからない。
なんとなく自分と世間の感覚が歳をとってズレていくと、こうやって理解のできない事件が増えていくように感じられるんだろうなと思う。

妹に展示のことを知らせて、「行ったら買っておいて」と言ってあった
「はな子のいる風景 イメージをくりかえす」が部屋に置いてあって、それを読む。
展示の図録で、2,000円で売られていたものなのだが、想像を超える分厚さだ。

めくってみると、モノクロのページに「井の頭自然文化園」に2016年までいた象の「はな子」の前で撮影されたスナップ写真が年代順に載っている。
何ページかごとに実際に写真が貼り込まれているような仕掛けがあって、裏に別の写真が印刷されていたり、
剥がし後が再現されていたり、はな子が日本に来たことを知らせる当時の新聞のコピーが織り込まれていたり、
とにかく凝っている。できるかぎり「思い出のアルバム」を本当にめくっているような感触を再現しようとしているようだ。
作るのが相当大変そうな本。

最初の方は「はな子」に子どもが乗って写っていたり、檻の中で撮っていたりして、「はな子」も小さい。
それがだんだん大きくなって年老いて、その前に色々な時代の人が立っている。
そしてその撮影日の「はな子」の飼育日誌が載っている。

ここに写っている赤ちゃんは今どうしているだろう、とか思いながら最後までページをめくっていく。
最後に「はな子」が死んだ日の記述があり、もちろんそこには写真はない。

で、最後の方に別冊の冊子がついていて、
そこには1枚1枚の写真の投稿者が寄せた写真のエピソードや「今までに失ったもの」についてのコメントが載っていて、それは2016年から時間を遡るように1940年代まで掲載されている。

それを読んでみると、「ここに写っているのは私と姉で、写真を撮ったのは父で、もう父は他界していて」というような話が当たり前だが1枚ごとにあるわけで、記憶がどんどん広がっていく、それで、ずっと後ろに「はな子」が写っている。

「はな子」が軸になって、色んな人が色々に生きた時間が想起されて、確かにこんな瞬間が世界に存在したっていう実感が込み上げてくる。

保坂和志の寄せている文章も良い。「残響」「コーリング」に触れている。
知らない人がお互いに知らないまま、響き合ったりする。
その世界のあり方が面白いし、できるだけ多くその感触を味わっていたい。

この本面白いよ!って人に言いたいけどどうやって伝えたらいいか分からない。すごく不思議な感じになるんだよ!としか言えない。

山形の祖母が亡くなった時に、自分の知らない無限のような祖母の色んなシーンをもし集めることができたらって思ったことがあった。それこそ町で祖母とすれ違った通行人が見た、姿とか。無数にこの世に散らばった断片。
もちろんそんなこと無理なんだけど、その困難なことをしてみようとした本だと思う。
もう部数がなくなってしまったみたいで通販の受付も終了している。みんなに薦めたいのに残念だ。

18時に家を出て、南千住でbutajiさんと待ち合わせ。
butajiさんが作った帽子を買わせてもらいつつ「丸千葉」で飲もうということになった。

小雨振る中を歩く。
自分としては2回目の「丸千葉」何もかもうまい。
カレー味の「タン入りつくね」っていうのが美味しかったなあ。

一人2千円。
千住大橋まで歩き「八っちゃん」という最高の立ち飲み屋に案内してもらい飲む。
500円で飲み物とおでん2品のセットがある。
味噌ベースのおでんでとんでもなく美味い。

色んなことがわかる「わかり手」の話。
時間の流れの話。
音楽の話。
などなど。

北千住まで歩き、終電で神田へ。
ひんやりした空気を吸って歩く。

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by chi-midoro | 2017-11-14 12:46 | 脱力
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