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ブラックニッカ日々 2018-05-11

起きる。あれ、大丈夫か?と一瞬思ったがそんなことなかった。
やはり重い二日酔いである。

10時チェックアウトなので9時頃なんとか起きてシャワー浴び、ギリギリまでごろごろして出る。
馬場マウスさんが「明日またホテル出たら連絡ください」と言ってくれていて、
連絡してみると「もうちょっとかかるけどそっちへ向かう」とのこと。
それまでの間、ホテルのすぐ近くのタリーズコーヒーで仕事。
具合が悪くトイレに行ってはまた席へ。

1時間ほどして馬場マウスさんが車で迎えに来てくれて、
今日もお言葉に甘えて乗せてもらって「かわら」という食堂へ。
ここのラーメンが八戸で一番好きだと馬場マウスさんがいう。
外観的にもかなり年季が入って雑然とした雰囲気で絶対に良い予感。
メニューを見て驚いたのだがラーメンが180円である。
老夫婦がやっている。
座敷に上がり、ファンシーな座布団に座る。
そしてぼーっと、何を話すでもなくラーメンが運ばれてくるのを待っている時間が最高だった。

昨日食べたラーメンのように細めの縮れ麺。鶏ガラと煮干しでダシをとっているというシンプルな醤油味のスープ。
チャーシューは小さいがギシッとした、昔のチャーシューで旨い。
こんな美味しくて180円なのか!すごすぎる。
タンメン、味噌ラーメン、カレーラーメンとかはまああるとして、なっとうラーメン、天玉ラーメン、とかどんななのかわからないメニューもたくさんある。カレーライスやそばやうどんもある。色々チャレンジしてみたいが、本当に腹立たしいことに自分は具合が悪く、ラーメンのスープすら満足に飲めない。
このままだと馬場マウスさんに迷惑をかけてしまうような気がしたので、無理せずに食べ終えた。
我々が食事している間、カウンターに二人、お勤め人っぽいおじさんがきて、二人ともラーメンだけ食べて行った。
老夫婦に「ありがとう。お粗末様ですー」と送り出され、そんなことねえと心の中で念じながら再び車に。

なんと、馬場マウスさんは今日、自分が八戸から新幹線に乗って帰る時間まで付き合ってくれるのだという。
十和田市現代美術館まで車で1時間ぐらいの距離なのだが、そこまでまずは行きましょうとのこと。
具合が悪そうな自分を見て気を遣ってくれたのか、「全然一人で運転するの好きなので、寝ててください」と言う。
優しい男。そして自分は胃腸がもうダメダメで脂汗をかいているような状態だったので、本当にだらしないことに、
窓をあけて風を浴びながらウトウトさせてもらう。
空気がひんやりして気持ち良い。
天気もよく、最高である。それが救いである。

「もうそろそろつきますよー」と言われて気づくと十和田市街だった。
馬場マウスさんはすでに2度ローゼンダール展を見ているそうで、「今日は外で待ってますんで好きなだけゆっくりしてくださいね」といって去っていった。
入口で千円払うと常設展もローゼンダール展も両方みることができる。
常設展から見ていくように案内されたのでまずそっちへ。
ふらつく足取りで館内に入ると、ロン・ミュエクの「スタンディング・ウーマン」っていう、写真とかで同じ人の作品をよく見たことのある、超リアルな人間を妙にデカいサイズで再現しているやつに出迎えられて、その本当に絶妙なデカさ(4メートルあるという)と、いかにも老婆という感じの体のライン、手の血管の生々しいこと。凝視するのが辛いほどで、一旦トイレに行ってゲエゲエ吐いてからまた戻る。何度見てもヤバい。というかこういう現代アートみたいなものこそ本当の「インスタ映え」なんじゃないか。みんな来て写真撮ったらいい。ほとんどの作品が撮影OKなので写真バシャバシャ撮る。

ぶつかりながら進んでいかないといけないぐらい真っ暗な空間に入っていくといきなり寂しい夜の道路が目の前に見える「ハンス・オプ・デ・ビーク」っていう人の作品はデビッドリンチの世界のまんまな感じだったし、靴を脱いでテーブルの上に置かれた椅子にのぼって穴から顔を突き出すといきなり霧に包まれた森が目の前に現れる栗林隆という人の「ザンプランド」という作品もすごくて、なんか二日酔いでめちゃくちゃな幻覚を見てるみたいな気分になった。サイケ体験というか。こんな風に見るというのはこれはこれで良い見方かもしれない。

で、いよいよ企画展コーナーの「ラファエル・ローゼンダール:ジェネロシティ 寛容さの美学」のエリアに入る。
カーテンの向こうの暗い空間に入るとでかい縦長のモニターが右側に4面、左側に4面の計8面あって、そこにローゼンダールの作品が3分ずつぐらいの間隔で次々映し出される。30分間でループするっていうので隅の方に置いてある椅子に座ってずっと見てる。
色が激しく切り替わるようなやつは目まいがしてくるので見てられないけどだいたいは楽しい。
「一体なんでわざわざこれをこうして見てるんだろう」って思う瞬間も無くは無いが、
例えばこれ(http://www.everythingalwayseverywhere.com/)がダーンと部屋の中にデカく映し出されると、
海が迫ってくるみたいな迫力があって感動する。
それで、そもそもなんで絵画は静止してるんだろう、と思えてくる。
技術的に仕方なかった時代は別として、こうやって額の中に展示される動画があったっていいんじゃないかと思えてくる。
というかローゼンダールがそれなのか。
映し出される作品はほぼ全部ここ(https://www.newrafael.com/websites/)にあって、だから今この瞬間も簡単にパソコンで見れるのだが、それをこうやって八戸まで見に来るということが面白い、と自分で思える人が見に来るんだろう。

その部屋を出ると、スクエアな模様をタペストリーにした作品や英語の俳句が綺麗な色のボードに印字してある作品があって、そっちはサッとみて、最後の部屋ではローゼンダール作品の中でも実際にタッチパッドを操作して遊べるようなものを選んで操作できるようになっていて、大きなスクリーンの前に立って、好きな作品で遊べる。脇に美術館のスタッフの女性が立っていて、少し照れる。他に人が来たら交替して出よう、と思っていたらいつまでも誰もこなくて、ほとんど全部やった。

ミュージアムショップでローゼンダール展のパンフレットと過去にここでやっていた横尾忠則展のパンフレットを買う。またしばらくトイレにこもる。

そうして外へ出て、美術館の外にも草間彌生のオブジェとか、色々あるのでフラフラとそっちへ歩いて行く。天気は良いのだが風がやけに強くて肌寒いほどだ。馬場マウスさんの車が止まっている駐車場へ行ってみると、眠っているようだった。邪魔しても悪いと思い、自分もそこら辺のベンチで横になる。

メテオさんやチミドロのみんなとLINEしてぼーっとしていると馬場マウスさんが起きてきた。
周囲を少し散歩する。国から地方自治体に1億円の助成金を配った「1億創生事業」の時、十和田市は1億円で公衆トイレを作ったそうで、そのトイレを見せてもらう。壁が細かなモザイクで飾られていてキレイだったが、1億円の使い道としてはもったいない。去年行った福島の「UFOふれあい館」もその1億円で作ったものだった。まああれもあれだけど…訪ねていく気になるだけ良い気がする。

その辺りには新しい図書館もできて、かっこいいキレイな建物ばかりだった。
が、その後に馬場マウスさんの車に乗ってみた商店街は閑散としたシャッター街に見え、なんか不思議なチグハグさだった。

まだ時間があるということでそこから三沢まで行って寺山修司記念館も見ていくことに。
のどかで広い道路をずっと行く。

三沢に入ると海のようにデカい湖が見える。
「三沢って基地の他になんか名物があったりするんですか?」と聞くと、
「うーん、でも基地があってアメリカ人がいっぱいいるから昔からヒップホップの町で、やけにみんな情報が早いんですよ。歳とってもみんなUSのヒップホップの新譜をチェックしてて」という。
「この辺の飲み屋とかはアメリカ人相手の店も多いから米軍の不祥事でしばらく外出禁止とかになると閑散としたりする」とのことで、「あーこの前もなんかありませんでしたか?戦闘機から部品が湖に落ちたみたいな。あれは別の場所ですっけ」と言ったら、
「あ、それがこの湖ですよ!」という。小川原湖という湖。
”湖水浴場”があって砂浜になってたりするのだが、結構広いエリアが米軍の敷地になっていて、日本人は入れないんだとか。
金網の向こうをみたらめちゃくちゃ気持ち良さそうな浜で「すごい良さそうな場所なのに入れないんですよー」というので不思議だ。

体調がだいぶマシになってきたと思いきや、寺山修司記念館の周りがグネグネした道でまたヤバい。
記念館のトイレにこもる。

寺山修司記念館には10年前にぐらいに来たことがある。
その時はどうやって来たんだろう。バスか。
竹宮恵子展もやっていて得した気分。

寺山修司がインタビューを受けている映像があって、「自分で自分に手紙を出したことがありますか」とか「自分の名前は好きですか」とかシュールな質問をして、寺山修司がそこになんともシュールに答える。例えば「自分の名前は好きですか」に対して「それは呼ぶ人に聞いて欲しい」みたいな。キザっつうか。そういう態度は今の自分にはほとんど関心がなくなっていることに気づいた。

いや、当時そういう難解なスタイルを取るっていうことが何かへの抵抗だったり何かを切り開くことだったりしたのだろうから、今どうこう言っても意味がないのかもしれないが、少なくとも今の自分にとっては興味が薄くて、なんつうか、感傷的過ぎてロマンチック過ぎてキザ過ぎて面倒なのだ。

が、天井桟敷の演劇で「人力飛行機ソロモン」という演目があって、それがすごくて、新宿全体を使った“市街劇”とのことなのだが、観客はまず紀伊国屋書店に行って、そこにいる登場人物からチケットを買う。するとそこに地図がついてきて、その地図を頼りに指定された場所に行くとその場所場所で演劇が断片的に行われていて、それをたどって鑑賞していく。って、こう書いてみると「そういうの他にもあるだろうな」という気がしてくるけど、その劇が1971年には相当過激だっただろう、だし、そういう風に町を別の空間にしてみては?という発想がめちゃくちゃ面白いなと思う。

前にプラモミリオンセラーズという人が作品をリリースして、そのリリース方法が、大阪の堺市だったかどこかのハードオフの中古CDラックに置かれてる杏里のなんとかっていうアルバムのケースを外すとダウンロードコードが記載してあるので、そこから落としてください、というような感じで、幸運にも大阪に住んでるし暇だし、と思って実際にそのハードオフに行ったら本当に杏里のCDがあって、コードが載っていて、なんだかドキドキした。

顔の見えない人同士が暗号を送り合って繋がっているような。あの感じの先には何か自分が面白いと感じるものがたくさんありそうな気がする。今はうまく言えないが。

とにかくその天井桟敷の市街劇はさぞヤバかったろうな、と、その雰囲気を体感してみたくなった。そういうのに参加する勇気全然ないけど。

そろそろ行きますかーと16時過ぎに記念館を出る。
新幹線は八戸駅から17時6分発(はやぶさは全席指定なので乗る便を事前に決めとかなきゃなんない)。三沢まで結構遠く来た気がしたがそれぐらいの距離なんだな、と思いながら馬場マウスさんの車に揺られ、馬場マウスさんのやっている「ノートヘンパイア」というヒップホップクルーの話などを聞きつつ、CDをいただいたりしつつ、そんな話をわははーとしてたらいつの間にか17時ぐらいになっていて「あれ?もうそろそろ着きますか?」「あれ?新幹線…あ、17時6分ですっけ!?うわあ、それは間に合わないかも…」みたいなことになり、最終的に八戸駅に着いたのがまさに17時6分って感じで「これは無理だー」とあきらめた。

みどりの窓口にキップを持っていくと「次の新幹線の座席を取り直そうと思うと6800円かかります。ただ、このキップは今日中であれば立ち席乗車券として使えます」と言う。「あ、立って乗っていくんであれば追加でお金いらないわけですか。なるほど」と、次に出る18時12分発の新幹線で帰ることにした。

「すみません…ほんとこんなミスを…」と馬場マウスさんは何度も言うのだが、そもそもこんな風に色々遠くまで車に乗せてもらって、むしろこっちが申し訳ないほどである。お土産買う時間もできてよかった。近くの物産館で馬場マウスさんおすすめの「青森県民の定番だという焼肉のタレ」など色々買う。

馬場マウスさんにお礼をし、今度は失敗せぬよう少し早めに改札をくぐる。今日も漁は休みになったそうで、仕事前に疲れさせてしまうこともなくてよかった。

新幹線に乗ると、案外通路に立っている人が他にもいる。「え、みんな乗り過ごしたの!?」と思ったが、そうじゃなくて、八戸から二戸へ行くとか盛岡へ行くとか、そういう近距離で新幹線を利用する場合にそもそも立ち席を買っていけば、少し安く利用できるようである。さすがに自分のように東京まで3時間フルで立つっていう人はいなそうだった。

立ち席といっても実際に通路にペタンと座っていてもいいわけで、肉体的な苦痛は全然ないのだが、自分の定めた居場所がゴミ捨て場に近くて、弁当とか缶ビールとかのゴミを捨てに来る人に「チッ!邪魔なんだよ貧民が!」みたいな顔をされることである。「元は俺も同じ金を払ってそこに座るはずだったんだよ…」と伝えたい。まあ俺が悪いだけなんだが。

いい具合に酔っ払ったおじさんが「お兄ちゃんなんでそんなどごすわってんの?」と声をかけてきて、事情を説明すると「あー!そうなんだね。ご苦労様です!」といって去って行った。

八戸から東京駅までの間、ずっとパリッコさんからこの前いただいた「酒場っ子」を読む。
それがすごく良くて、そのおかげであっという間であった。
「酒場っ子」はピコカルの大衆酒場ベスト1000の過去記事をベースにはしつつも今のパリッコさんの視点で大幅に書きなおしたり、書き加えたりしているものがベースになった本で、たくさんの店が紹介されていて、315ページもある。その中には例えば「細雪」とか、無くなった店の回もある。パリッコさんが関西に来た時に一緒に行った店の回もあり、かと思えばもちろんパリッコさんのホームである練馬方面の情報がやたら濃く続く何回かもあり、何が言いたいかというと、最新の網羅的な居酒屋情報、とかでは全然ない。そのように読む本ではなく、パリッコさんが店に入って飲み食いしたもの、考えたことを一緒になって想像することを楽しむ本で、二日酔いで一日中具合が悪かった自分にとっては「もし自分が酒を飲めなくなっても楽しい本だろうな」と思えるのだった。

つうかまず、文章が上手である。よく「いやー笑える本でした!」とか簡単に言うけど本当にハハハと笑いながら読んでいるわけではなかったりするのに対し、この本は物理的に笑える。あと、パリッコさんの酒とつまみ、そしてそれを出す店に対する愛が圧倒的である。自分なんか、スタンプラリーみたいに「はいはい、これでとにかく一度は行ったってことでいいや」みたいに、もうその後はスッと知らん顔しているような店ばかりだけど、パリッコさんはちゃんと何度も足を運んで、ちゃんとその店を愛して書いている(全部がそうじゃないだろうけど、できるだけそうしている)のがわかる。

一回一回がちゃんとストンと落ちるとこに落ちて気持ち良く読み終わり、これはもう人がたくさん読む場所で定期的に連載され、量がたまるごとに一冊また一冊で出版されていって当然の本であると思えた。自分は縁あって、一緒に何かしたり、ついでに自分も「酒場ライター」と名乗ったりすることがあるけど、レベルが違うなーと、しかもそれで凹むとかではなく、とにかくすげー!と思った。

何日か前からポツポツ読み始めて東京に着くころにもう少しで読み終わるところまできて、その後、東京駅で今度は東海道新幹線の最終に乗り換えて新大阪に向かう途中で読み終えた。作りもすごくよくて、愛の溢れる本だ。

八戸に18時過ぎまでいたのに24時過ぎには大阪に行けるというのは不思議だ。
東京から新大阪までは自由席に座ることができ、パソコン開いて日記を書いて過ごす。
ようやく氷結1缶飲めるまでに回復。

24時過ぎに家に着く。
新幹線に乗っている時に猛烈にいきなり食べたくなったグラタンをコンビニで買ったので、それを食べる。
180円のラーメン以来の食事だと思うと、なんだか夢のようだ。

不在中に届いていた荷物の整理などして明け方寝る。

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by chi-midoro | 2018-05-12 17:38 | 脱力
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