久々の終日在宅デー。
図書館で色々借りてる本を半分返しにいって、予約していた本を受け取る。 100円ローソンでコーン缶とカップ味噌ラーメンを買い帰宅。 それを食べる。 仕事しなきゃいけないけどせず。 山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」を読む。 めちゃくちゃ良かった。 何も無い地方都市(作者の出身が富山だというのでなんとなく富山なのかな、と思って読む)に、東京から帰ってきた30代の女性とか、そこから出ていく人だとか、そこでずっと暮らしている人とか、そういう人たちが出てくる8つの短編から成る長編、というスタイル。 国道沿いにデカいチェーン店が並んでいて、休みの日はイオン行って時間潰すぐらいしかない、みたいな場所らしい。 それぞれの短編に出てくる人たちは年齢も居場所も微妙に違っているのだが、椎名一樹という、高校の頃、とんでもなく人気があって輝いていた男が地元にいて、そいつが軸になってそれぞれの短編をつないでいる。で、その椎名は、ある一時期はモテて、みんなに期待されていたんだけど、今は自動車教習所の教官をしていて、その頃の輝きは失って、でも普通に真面目に頑張っている。結婚して子供がいる。若い頃、椎名を好きだった女性が久々に会った椎名の平凡さにガッカリする場面がひとつめの短編で出てきて、だから、その後、何度も出てくる椎名を読み手はなんとなく可愛そうなやつとしてイメージすることになり、椎名が過去、神のようにモテる時代のことが書かれていても、「そんなやついねーだろ!」とか思わず、「そんな椎名も20年後には輝きを失ってしまうんだ」みたいに、優しい眼差しで読めてしまう。そこが作者のすごく上手なところで、登場人物はみんなそれぞれ退屈して、まばゆい都会に憧れて、みたいな可哀想な存在のように描かれているんだけど、意地悪な書き方になり過ぎず、みんなそれぞれ愛らしい。この前の柴崎友香の小説の人々をいまいち好きになれなかったのと対照的に、こっちに出てくるやつらはなんかみんな味がある。 と、ここまで書いてシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら「味がある」と書いた登場人物について思い出してみたけど、それぞれの人物の描かれ方は結構意地悪でペラペラ化して書いてあって、例えば一つ目の話で出てくる「壁にポエムいっぱい書いてある系ラーメン屋」の店主は、まさにそういうイメージを煮詰めたような面倒でロマンチックな人物に書かれてるし、とにかく結婚したい!ということばっかり考えて過ごしている登場人物も出てくるし、普段の自分なら読みながら「もっとみんなそれだけじゃなくて色々考えたり、大げさなイメージからどこかはみ出す部分があるだろうよ」と思いそうだけど、この小説はあまりそうならないのは作者の笑いの加減が絶妙で、笑えてしまうことによって、そいつらを愛らしく思ってしまう、というテクニックなのかもしれない。退屈な地元から東京へ出て、しばらくぶりに帰省した主人公が 「朝子はなんだか、自分はいまもここにいるような気がする。そしてはっきりと悟る。わたしは自分の一部を、ここに置いてきたのだ。自分の一部は今もこの町にいて、やっぱりどこにも行っていないのだ。」 と思うところがある。その、どんなに退屈だと憎んでもやはり自分をそこから切り離しては考えることができないような感じが、すごくわかり、染みた。こういうのが割とアップテンポな、笑いの要素の散りばめられた全体の中にポツポツとあって刺さる。けど、一個だけ、「ゆうこ」という人物が主人公の短編で、その「ゆうこ」は椎名のことを好きになり、椎名が仕事を探すのを手伝ってやったりするのだが、最後の最後に「ゆうこ」が男性で、「ゆうこ」というのはそいつが自分の中で作った人格みたいなものだったらしいことがわかるようになっているのだが、その仕掛け、意地悪過ぎるなと思った。読者は「ゆうこ」が女性だと思って読み進めていって最後に驚かされるのだが、そのびっくりの必要はあるだろうか。 でもとにかく、これがデビュー作だというけどめちゃくちゃ上手な人だと思った。エッセイとか、何を書いても面白いに違いない。次の小説も読んでみたい。 夕飯は久々に鍋。冷蔵庫の中でずいぶんしなびてしまった野菜類を一掃すべく使う。でも日が経った野菜はやっぱりどこか美味しくなくて、なんか全体的に悲しい鍋になった。 父に電話する。妹も母もいて居酒屋で食事しているらしい。「励ましてやってくれ」とのこと。 一旦寝ておきて、仕事はやっぱりしないで本を読んだりゲームしたりする。
by chi-midoro
| 2018-11-23 14:09
| 脱力
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