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ブラックニッカ日々 2018-11-29

昨日、父と下の妹と居酒屋で飲んでいて、「お父さん、明日行ったら?」という話になった。

当初今回の入退院にはノータッチの予定だった父だが、「車を出して迎えに来てくれたら母も楽だし、どうよ」と。すると父も「まあ、いいけどな」みたいな反応で、もともとは自分と上の妹とで電車に乗って病院へ迎えにいくはずだったのが、父の車に乗って三人で行くことになった。

人形町で9時に待ち合わせることになっていて、昨日に引き続き、遅刻が怖くて断続的に起きたり寝たり。いつも東京に来ると変な夢ばかり見る。たいてい悪夢ばかりだが、どれも長編で設定も複雑だ。今はもう思い出せないけど、髪の毛に枝だの葉っぱだのがたくさん絡まっていて不快、というシーンがあった記憶がある。

父の車の前で合流し、乗り込む。上の妹は上の妹で、この前健康診断で引っかかり子宮がんの疑いあり、みたいなことで、今きちんとした検査を受けて結果を待っている。12月19日に結果が出るとのこと。こんなことが重なると、お祓いでもなんでもしておきたくなる。車内で昨日の母の様子や病室のことなどを話しながら「っていうかあなたは大丈夫なの?」と妹に聞きたくなるが、なんとなく真っ直ぐそんなことを聞くこともできず、それは脇においやる感じで、母のことを話している。

今日も天気が良い。皇居の外周を周るようにして神楽坂方面へ。昔よく歩いた辺りも通る。

30分ほどで到着。巨大な病院の、母が入院しているのとは別の棟の地下に駐車場があるらしく、そっちへ向かう。停めた場所からエレベーターで2階へ上がり、長い長い連絡通路を通って母のいる病棟へ。昨日来ただけのくせに俺がリーダーのように先導する。

11階に着いて面会の手続きをして、病室のドアを開けるまで、なんとなく母がベッドに寝ている様子を思い浮かべていたが、白い引き戸を開けてみると、母はすでに着替えていて、荷物の片付けも済んでいる。今すぐでも出られるような状態。係の人がもうすぐこの部屋に請求書を持ってくるそうで、それをもらえば会計して帰るだけだとか。「ここが一泊6万円。へーえ」と父が窓から外を眺める。

母は昨日は熱が出たけど、夜半にはだいぶ下がり、今はもう平熱に戻っているという。夕飯ほとんど食べなかった分、朝は食欲があったのだが、食パン1枚にジャムちょっとみたいな食事でガッカリしたそうである。とりあえず今のところ、体調がどうとかもないようだ。

請求書を受け取って会計を済ませ、忘れ物がないか病院の人の立ち合いのもとにチェックして終わり。昨日来たのと同じように荷物を持って出る。次からは外来で3週間おきに抗がん剤を投与していって、経過を見つつ3か月後に手術する予定。来た通路を同じように歩き、車に乗って人形町へ戻る。車の中では母と妹がお互いの体の話をしている。父はしばらく前に受けた健康診断の結果が出てるのに面倒がって受け取りに行ってないらしく、「今日行くかな」と言う。3年ぐらい健康診断をサボっている自分も、これを機に行くかーと思いつつ、しばらく行かない気がする。

11時にはもう人形町。昨日は結構長く病院にいたので今日も何時に戻ってくるやらと思っていたのが拍子抜けするほどだ。しばらく近くの緑道で時間を潰し、いつも11時45分頃に開く生駒軒に行って、4人でご飯。妹は今日は休みなので、瓶ビールをもらって一緒に飲む。母もタンメンを食べている。さすがにいつもより食欲がなく、食べ残していたが、まるで病人たちの昼とは思えない、これまで通りの時間だ。今日のタンメンはいつにも増して味が淡泊で、妹が注文したチャーハンもそれに負けず淡麗な味。塩ほとんど使ってないんじゃないか。油っぽくもない。じわじわと味がわかってくる、独特の体験。

食べ終えて喫茶店でコーヒーを飲んでいると眠気に襲われた。妹と母が話しているのを聞きながらウトウトする。

みんなと別れて部屋に戻り。ひと眠りしようかと思いつつ、やっぱり部屋を出ることにして池袋へ。とりあえず今回の母のことはこれで完了だと思って、それで気が抜けたのか、歩いていたらふいに落ち込んできて、この前はいくらでも本が欲しいように思えたジュンク堂に入っても何も頭に入ってこず、だけど時間はあまっていてすることはないのでとりあえず立ち読みする。

ムンク関連の本がたくさん出ていて、それは今、上野でムンク展が開催されているかららしく、そういえばFacebookで中原昌也がムンク展に行ったことを書いていたなと思い、明日行ってみようかなと思う。

小田島さんとジャケのデザインのことでやり取りしているうちに充電が切れてしまい、近所のドコモショップで充電させてもらいながら、あてもなくアディダスの店みたり、無印良品みたり、なんだか居場所が定まらない。

夜はハセガワさんに飲もうと誘ってもらっており、18時半に門前仲町に集合することに。充電が半分ぐらい回復したところで門仲方面へ向かう。だいぶ早く着いた門前仲町駅で上間陽子「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」を読み終えた。

著者は沖縄出身で、この本は、沖縄でDV被害にあった少女や、シングルマザーになって水商売をしながら生活している若い女性たちについて著者が寄り添い、これまでどういう体験をしてきたのかを聞き書きしたもの。7つの章にわかれている。一つの章ごとにフォーカスされる女性は違っていて、みんなそれぞれ経緯も抱えている状況も違うんだけど、似通っている部分もある。最後の章に出てくる「春菜」は、家庭環境が安定せず、よく家を出て男友達の家を渡り歩いていたところに、援助交際をすすめてくる「和樹」というひとつ年上の男に会い、客はその「和樹」がとってきてお金を折半するような暮らしをして、そのうちに「和樹」のことが好きになって付き合うようになるのだが、「和樹」は「春菜」が体で稼いでくる金を使い込むようになり、徐々にそんな「和樹」に嫌気がさしてきて別れることになるんだけど、完全に関係を断つことはできず、最近新しくできた彼氏に自分が援助交際をしてきたことを悟られまいとしている、知られたら自分が汚れていると思われると思う、みたいな話が語られ、そしてその語っている「春菜」はその時まだ20歳になったばかりだという。ものすごいスピードで生きている感じだ。

著者があとがきの最後に「早く大人にならなくてはいけなかった子どもたちが、自分を慈しみ、いたわることのできるような場所をつくりだしていきたいと思っています」と書いている。ゆっくり大人になれるということは贅沢なことなのかもしれない。初出が岸政彦編集の雑誌だったようで(というか岸政彦つながりで自分はこの本を知ったのかも)、岸政彦の沖縄本も読みたくなる。

読み終えてぼーっとした気持ちで階段をのぼり、門前仲町の交差点に出る。電話がかかってきて通りの向こうにいるハセガワさんを見つけて合流。1年前ぐらいに二人で入った「万俵」という店で飲む。今日はbutajiさんと一緒に作らせてもらった「遠い街」というCDの打ち上げみたいな意味合いもあって、butajiさんも誘ってくれていたそうなのだが、急きょこれなくなってしまったらしい。そのCDのことや、今後の仕事のことなど話しながら飲む。1時間ほどして仕事帰りのハナイさんが来る。

なんとなく母の病気の話になって、そこで、ハナイさんが痛風になった時の話も引き合いに出しつつ、母が「がんになってみたら色んな人が『私も前に同じ手術したよー』とか、『私の友達にもいる』とか連絡してくれるんだよね」と言っていたことを思い出し、病気になると、同じ病気や、それに近い状況を経験してきた人たちの言葉が聞こえてきたり、そういう本が目につくようになったり、これまで気づかずにいた透明の線が急に色づいて見えてくるみたいに、世の中に存在していたレイヤーが現れる。

ハナイさんも痛風になった時にそんな話を仲間にしたら「お前もいよいよか。実は俺も」みたいな感じで、まるで秘密クラブへの入会を許されたかのように、実は存在していた痛風ネットワークの存在が眼前に広がり、「心配するな、こういうところに気をつければ飲めるぞ」みたいなことを色んな人から教わったりしたそうだ。

例えばものもらいが急にできて、いつも歩いている町の中を眼科を探して歩いてみたら、案外たくさんあることに気づいたりするみたいな。というか、必要があって初めて見えてくるレイヤーが無数に世の中にはある。それの重なりが世の中なんだろう。

それでいうと「がん」とか、女性にとっての「乳がん」とかはかなり情報量の多いレイヤーで、それによって見えてくるものの広がりがすごい。昨日読んだ本の「自分の中に起こった感覚を手掛かりに他人の気持ちを想像する」みたいな感じで、世界に重なっている見えない層をできるだけたくさん感じられれば、それだけ色々なことに共感できるようになるのかもなと思う。それが楽しい人もいるし、そんなの意味ないよという人もいるだろうけど。

ハセガワさんはメテオさんにも声をかけていて、遅くなるけど仕事終わり次第来てくれるというので、メテオさんが出やすいようにと、有楽町へ移動することに。

「食安ででも飲みますかー」という話になって、ふと、日比谷駅から直結している「ミッドタウン日比谷」っていう、ここ最近できたばかりなはずの施設の地下にコンビニがあったことを思い出す。そして行ってみると、(地下だから当然だが)屋根あり、暖房あり、綺麗なトイレありの最高スペースで、コンビニの前に置かれた椅子とテーブルで酒を飲んでいる人もチラホラ。「こりゃいいや!」と、そこで飲んで待つことにして、しばらく歓談しているとメテオさんとこまんたれ部さんが来る。みんなで乾杯して記念撮影して、そこではほどほどにして「食安」にも結局行ってみることになり、もう一杯。気付けば23時頃となり、三々五々解散。メテオさん、ハセガワさんと三人で東京駅方面まで歩く。

メテオさんを改札まで送り、ハセガワさんと人形町方面まで歩いて解散。
長い一日だった。

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by chi-midoro | 2018-12-02 03:02 | 脱力
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