父と二人で飲みに行くということをこれまでしたことがなかった。
思うところあり、平日の夜に二人で時間を合わせて落ち合った。
場所は森下の「ときわや」という飲み屋。
L字のカウンターに椅子が6つぐらいの小さな空間だった。
この「ときわや」はこの1月いっぱいでお店をしめてしまうらしい。
父が昔、この近所に住んでいた頃によく通っていて、
引っ越した後も何ヶ月かに一回、顔を出していたという。
「お前も連れてきたことがある」というので聞いてみるに、
連日連夜飲み歩いて家に帰らない父に業を煮やした母が、
ある時、実家の山形に突然帰ってしまった。
その夜、父は、3歳ぐらいだった私を連れてこの店に飲みにきたそうだ。
その店で父と飲んでいるというのもなんだか変で、高田渡の「系図」を思い出した。
お店をひとりでやっているのは「はっちゃん」とみんなに呼ばれる女性で、
74歳になるんだという。
先代からやっているというお店を「なんでやめちゃうんですか」と聞いてみたところ
「都営住宅が当たったから」とのことだった。
お客さんのとぼけた物言いにハキハキつっこむ「はっちゃん」を見ているのが楽しい。
「暖房代が節約できるから」とおすすめされた湯豆腐を食べて日本酒を飲んで、
しみじみした時間を過ごした。
次の日になって検索してみても食べログにも何も「ときわや」なんて載ってなくて
夢のような気もした。
いい店だったなー